小説:駄作 作者:---
溶ける

照りつける・・・。
照りつける・・・照りつける・・・。

溶けてしまいそうな気がしてしまうぐらいに照り付けてくる。
それが錯覚だとは理解しているが、その理解の範疇を超えるほどに照りつける。

木陰に身を埋めても照り付けてくる物からは逃げられない。
ただ、照りつける。
それだけなのにそれが怖い。

いつか溶けてしまうんじゃないかと思う。
けど、どこかで全てが溶けてしまったらどうなるのだろうかと考えている自分がいるのを自覚する。

「あ、また何処かで何かが溶けた」

何かが溶けた。
それが怖い。
何が溶けたのか分からないのが怖い。
なのに、何処かで確実に何かが溶けたと分かる自分が怖い。

見えないところで何かが溶けたと認識できる自分に恐怖する。
その事を知り合いに話したことがあった気がする。
その時は知り合いからは奇異の目で見られていた気がする。

そうだ。
たぶん、いま、さっき、溶けたのはその知り合いだろう。
そう思う。
そして多分、知り合いも私が言っていたことが嘘ではないと分かっただろう。
それは何て、可笑しい事なのか。

「――くっ。あははははは」

可笑しくて笑った。
笑いが漏れ続けたから笑い続けた。
ああ、それは何て可笑しいことなのか。

そして、また、どこかで、なにかが、とけた。

天秤
「おはよ」

一日が始まる声。
それが始まりで。
用意されていた朝ごはんに手を出す。
味付けも普通。
食事中の会話もいたって普通。
窓から入ってくる日光の量もいたって普通。
なにもかもが普通。
人が死ぬのも普通で、生まれるのも普通。
命が理不尽に奪われるのも普通なのに。
救われることは殆ど無い。
天秤に載せれば傾くだろう。

だけど世界なんてそんなもの。
傾き、揺れて、けど堕ちはしない。
そんな理不尽。
傾くのなら落ちればいいと思う。
けどそれは我侭で。
それがまた天秤を傾かせる。
けど何処まで行っても天秤を下げる糸は切れない。
だから何処までも普通が続く。

いたって普通。

「お休み」

一日が終わる声。
それで終わる。

けど、終わるまでの間に胸の内でこう思う。
ああ、明日も生きられますように、と。

そう、世界は、いたって普通で、理不尽だ。